Lyrics: いとうせいこう
Music: 原口沙輔
存在とは何かと君は問うた。老いた私に若き人は。
君よ、ただひたすらあらかじめあるものとして存在をとらえればあやまちをおかす。
また、ひたすらないものとして存在をとらえてもあやまる。
二世紀のインドに生きた偉大な僧侶、ナーガールジュナはこう言っている。
生じることはない
滅することもない
生じつつ滅することもない
生じるとも滅するとも言うことが出来ない
テトラレンマ。四つの否定と呼ばれるものだ。
それは長い仏教の思索の中でこうも言われてきた。
我は存在しない 非有
無我とも言えない 非無
存在し、かつ存在しないのでもない 非有・非無
存在するともしないとも言うことが出来ない 非非有・非非無
結局、「存在するともしないとも言うことが出来ない」のならば、他の三つの定義は要るのだろうか。
君よ、しかし私はこう考えるのだ。
最初から「存在するともしないとも言うことが出来ない」とだけ答えるなら、それはただ曖昧に思われ、あたかも答えないに等しく見えてしまう。
だから出口を失うほど、私たちは丁寧に否定を進めねばならない。
我は存在しない
存在しないとも言えない
存在し、かつ存在しないのでもない
その存在の否定の向こうに「存在するともしないとも言うことが出来ない」、それゆえの絶対的な自由がひらける。それでこそ、四つの否定におおいなる力が生じる。
君は存在しない
が、存在しないとも言えない
存在しつつ存在しないのでもない
存在するともしないとも言うことが出来ない
これが答えだ。
答えるならばこれだ。