雨音だけが部屋を満たす
時計の針は逆に回る
鏡のなかの他人の顔
口元だけで笑いかける
胸の奥に空いた穴は
黒い風だけ通してゆく
埋めようとする指の先
零れ落ちてく闇の砂
廻る 廻る 同じ景色を
抜け出せない螺旋の底で
明日は昨日に着替えて
僕はまた僕をなぞる
声にならない叫びは
喉の奥で羽化できない蛹
窓ガラスに映る街は
みんな上手に生きてるのに
誰かが差し伸べる手は
僕を通り抜けて虚空を掴む
存在が透けてゆくように
痛みだけが僕の証明
廻る 廻る 硝子の迷路
出口のない環のなかで
生まれる前に戻れない
死ぬこともまだ許されない
遠くでサイレンが鳴る
それは誰かの終わりだろうか
僕はただ耳を塞いで
今日も壁の染みを数える
胸の穴は銀河のように
音もなくゆっくり広がる
僕という名の容器には
虚無しか詰まっていなかった
それでも夜は明けてしまう
光が瞼を刺しにくる
また始まる 同じ一日
僕は静かに息をする
廻る 廻る 世界は廻る
僕を忘れたまま回る
この穴だけが永遠に
深く 深く ただ深くなる