花弁の傷跡

お気に入りの小説で指を切ったような 温かさでやけどをしたような 優しい笑顔で胸が痛むのは 君が初めてだった いつも通りの「また明日」 を期待して君の瞳を見た はじめて見た君の涙 僕は何も言えなかった もう少し、子供のままでいれたら もう少し、大人になんかならずにいれたら もう少し、我儘が言えるような心があれば ただ一言 いなくならないで、って言えたなら 君の笑顔が傷になっていく さよならの言い方も知らないまま おはようと言えると信じていた 夢みたいな日々が本当に夢でも 別に構わないと言い張れたのは 君が 消えないと思っていたから 舞い散る花弁も傷になっていく もう少し、子供のままでいれたら ─ 頬を伝った涙が ─ 伸ばす手の先に触れた雫が もう少し、大人になんかならずにいれたら ─ 君の笑顔とともに弾けた赤が ─ まるで桜の花弁みたいだね もう少し、我儘が言えるような心があれば ─ 君を忘れずに済むなら ─ この傷も愛せるような気がしたんだ ただ一言 ─ あの時に いなくならないで、って言えたなら 舞い散る花弁で見えなくなっていく 傷跡になっていく